小林祐梨子

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BLOG:今日もぼちぼちいこか~

MGCを終えて

2019.9.17

これほど興奮するレースがかつてあっただろうか?

一発選考だから感じる緊張感。

スタート地点や控室での雰囲気は独特なものでした。

精神的にも肉体的にもかなり追い込んだ練習をする中でピークを合わせる難しさ。

トラックの日本選手権でももちろん経験はしましたがそれとは桁違い。

4大会連続オリンピック出場の福士さんが「マラソンはまだ掴めてない」と口にするほど。

「眠りが浅い」と試合前に鈴木選手が口にするほど。

 

前田選手の際立った強さ。

鈴木選手の見たことがない40km以降の限界を超えた走り。

4秒差まで詰め調子以上の維持の走りを見せた小原選手には誰もが手に汗を握りますね。

最年少ながら勇気をだして自滅覚悟で挑む一山選手。

ゴールして「休んでる場合じゃない」と笑顔で次に向かう37歳福士選手。

 

スタート前の控え室、1番落ち着いていたのが前田選手でした。

落ち着いてるというよりもいつも通りといった感じでしょうか。

普段から口数は少なくのほほんとした前田選手ですが、

私からすると内に秘めたものがあり

不気味な存在(表現変ですね笑)でまさに今回のダークホースでしたよね。

二年前にいち早くMGCの舞台を決め、

4月から毎月1000km以上を走り込み

「練習への自信はある」まさに言葉通りの様子が伺えました。

コツコツと着実に泥臭く積むことのできる選手が勝つのだと思います。

なぜそれができるのか?走るのがすき、オリンピックへ行きたい。

もちろんそんな想いはあるでしょうけど、それだけでしょうか。

彼女は全国高校駅伝は3年間6番手の補欠で出場すらしておりません。

3年の時にチームは優勝。

高校野球でも同じですが最終学年でチームが日本一になった時の補欠というのはどれほど悔しいのか。

彼女は卒業後マラソンを求め、またきつい練習を求め天満屋へ。

今回の松田選手、MGCには辞退し世界陸上へ向かう中野選手も同じ薫英です。

ジュニア期に追い込みすぎない、やらせすぎない学校ですので顕著に現れてますね!

天満屋で飛躍した選手ですが、この高校3年間もとっても大切なものだと感じます。

北海道マラソンも大阪国際も積極的に主導権を握るスタイル。

大阪では松田選手に抜かれながらも自己ベスト。

後ろからくる恐怖よりも彼女は自分のスタイルを貫く意志が走りから見え後ろは気にせず前だけ見る、

そんなところも見ていて気持ちよかったですね。

ある意味高校の先輩の松田選手は心に火がつくでしょうし、

チームの先輩小原選手も東京に十分チャンスがありますから3人目も目が離せません。

一方で鈴木亜由子選手。

全国中学校大会で優勝している天才少女が二度の手術を経てマラソンで東京オリンピックに立ちメダルを目指す。

これは前田選手とまた違ったバックグラウンドですよね。

中学生で優勝すると特に女子選手は早咲きだなんて言われます。

彼女の集中力は際立ってます。

靴紐を何度も何度も結び直す、話をしていても自分の世界に入り込み集中していました。

東京への切符を手にする練習を詰めているが、

東京五輪で勝つ練習はまだできていないと言うことでした。

メダルを目指しているから出る言葉です。

40km以降の走りには驚きました。

鈴木選手が限界を超えるとあの小柄で軽いフォームが重りをつけているようになる、

口があれだけ開く、

相当な苦しさが伝わってきました。

ゴール後、

「最初があまりにもハイペースだったのできつくてきつくて。足が止まりました。もう一段階レベルを上げる練習をします」と。

一回だけのマラソンで本命と言われ重圧を感じてたと思います。

そんなプレッシャーから解放どこかホッとした様子と今の自分の力は出し切れたという表情が印象的でした。

 

「ミニMGC」と題して毎日が高いレベルで競い合ってきたワコールの3選手。

「3人が同じ練習をすることはデメリットでも何でもない。練習でできないなら本番ではできない。練習から潰し合うくらいでやらないと」と永山監督がおっしゃるように

今大会3人はどの選手よりも毎日精神的に鍛えられて挑んでるような感じでした。

やはり私としては福士加代子さんの存在がこの大会の価値をあげているような気持ちで見ておりました。

5大会連続へ向かう、しかもマラソンでオリンピックを経験してる彼女が目指すものとは?

モチベーションとは?

気になって気になって。

まだ自分は出し切れていない、チャレンジしているようでできてない、弱さがある。と。

マラソンで自分が思う走りを突き詰めている福士さんは今日優勝した前田選手にも鈴木選手にもないものを持っているなと感じました。

やっぱり福士加代子はカッコいいですね!

 

マラソン選手ではないので今回どこがって地点は挙げれませんが「攻め」。

この言葉に尽きると思います。守りに入ったら日本では勝負できるかもしれないけど攻めないといけない。

これが日本の勝ちパターンのような気がします。

設楽選手は攻めたけど負けました。

でも世界と勝負する意識が彼にはあるんだと思います。

私は5000mで0.75秒で予選落ちしました。

その後、リオで上原選手が20年ぶりに決勝へ行きました。

とにかく攻めて攻めて粘りまくりました。

攻めに徹した前田選手、金さんが「今日がオリンピックなら金メダル」と断言してたのが印象的でした。

本日のABCラジオ「伊藤史隆のラジオノオト」で19時過ぎごろから電話出演、

またNHK BS1にて9月21日(土)午後10時~午後10時49分

「スポーツ酒場 語り亭 ~女子マラソン 五輪をかけた“勝負のポイント”~」にて出演予定です。

是非お時間あればよろしくお願いします。